霧の月 1

私、山瀬裕一は先月四十七歳の誕生日を迎えていた。それは五年前の初秋の山梨県甲府近郊での思わぬ事に遭遇したことからこの話は始まるのである。その前に私がどうして甲府に行ったかを少し書いておく。私は沖縄県で生まれ育った。高校卒業後地方公務員として働いている。二度の離婚歴がありうだつの上がらない男である。私のことはおいおい書く事にするが、甲府でのある事に遭遇して以来ここ五年余りかなり緊張した生活を余儀なくされていた。 つづく